プロジェクト・ヘイルメアリー ( Audible 版) 感想 (ネタバレあり)
前知識何もなかったんだけど、またしても男が宇宙で独り孤軍奮闘する話で笑ってしまった
アストロファージというマクガフィンをひとつ用意した宇宙SFになっていて、アストロファージを滅菌するために、なぜかアストロファージに襲撃を受けても輝度を保っている星・タウセチへ向かうプロジェクト「ヘイルメアリー」が組織されて...というのが前半の流れ
個人的にはストラットがすごい好きなキャラクターで、グレースと最終的には哀しい結末を迎えるのが物語的なカタルシスにもなっていて良かった
宇宙を放浪している主人公は記憶を無くしていて(自分の名前を思い出すのが最初のミッション)、だんだんとここへ至る過程を思い出していくっていうギミックも、リニアに進むよりは面白くてなかなか良かった
中盤は異星の種族エリディアンの宇宙船の生き残りエンジニア「ロッキー」とのバディ冒険譚になっていて、ここは王道に楽しい 科学スペシャリストのグレースと、工学スペシャリストのロッキーのかけあいが面白いし、異星文化交流的な部分も面白い
オーディオブック版で良かったこととして、エリディアンの音声が実際のシンセサイザーのような音として収録されているあたり
てっきり火星の人同様孤独にミッションを進めていくのかなあ、とおもってたら一捻り加えてきたので唸った
タウセチの星・エイドリアンの大気圏にはアストロファージを捕食するタウメーバがいたのだが、このタウメーバが窒素にとても弱くて....というのがツイスト
タウメーバを抗生物質に耐性を得ていくウイルスのように、ちょっとずつ窒素耐性のあるタウメーバを遺伝的アルゴリズムよろしくつくっていって、完成したタウメーバをもって永遠の別れを迎えるのだが.....というのが中盤 タウメーバは窒素耐性を獲得すると同時に、エリディアンの主な加工材料であるキセノナイトへの耐性も獲得していて、キセノナイト製の宇宙船に乗ったロッキーは自らの命と、惑星エリドの命運が風前の灯火に....ってことで、地球にはタウメーバを搭載した小型宇宙船・ビートルズを送り出して、自分はロッキーとエリドを救うためにブリップAに戻り....ってのが終盤の山
俺だったらどうだろうな....って考えながら聞き込んでしまった、結果的にタウメーバを食べて食いつなぐことで生命維持には成功できたのでよかったが、決死の覚悟で見つかるかも分からないブリップAを探しに行く決断はなかなか難しいなとおもった
エピローグとして、エリドで暮らすグレースの元にソル(太陽系)の輝度が戻ったという知らせが入って、ロッキーと喜びを分かち合うというラストには結構グッときた。また、エリドでも教員を続けていて、エリディアンの教育をしているのはグレースらしくて良いなとおもったりした
ぜひ外伝でも続編でもなんでもいいので、ぜひビートルズ到着前や、到着後の地球の誰かの視点の物語を読みたい!! と強くおもった
ヘイルメアリー発射後に地球はどの程度誰の予想が当たったのかは分からないが、届けられたタウメーバを金星に放つプロジェクトの話、絶対面白いとおもうなあ
ロッキーとの問答で、アストロファージを祖とする生命体が少なくとも2つ存在するわけだから....ね?という話をしていたけど、何かで読んだが(カルダシェフ・スケールだったかな...?)たとえ任意の惑星が生命を発生する条件を満たしていたとしても、宇宙の時間スケールだと同レベルの科学技術/文明レベルの生命体が鉢合わせる可能性はとんでもなく低いって話にまあまあ納得しているので、そこんとこはどうなんだろうなとおもったりした